1、筋ドルの怒り

小学3年の頃だと思う。

私と悪友達は担任の佐藤先生に引っ叩かれた。

確か4人で掃除の時間なのに教室で野球をやっていた。
ボールは新聞紙を丸めガムテープで固めたもので、バットはホウキを使用していた。そんな急ごしらえの道具で遊戯に没頭していたのだ。
真面目に掃除をしている女子からは顰蹙を買い、我々は「うるせえ、馬のけつ!」と意味不明な罵詈雑言で応酬した。
馬のけつ達は冷ややかな目を我々に向けながら掃除をしていて、野球に興じている児童には目の上のたんこぶであった。

私の打球が二遊間を抜けてタイムリーになり、興奮しているところに佐藤先生は教室に入って来た。ちょうどその時、私は女子達に「イエイ!このヤロー!」と威勢よく啖呵を切った途端のことであった。

「お前ら何やってるんだー!」と佐藤先生は顔面を真っ赤にし青筋を立てて怒り狂った。
意表を突かれた筋ドルの来襲に我々は全身凍りついてしまい、野球どころの騒ぎではない。
「お前ら一列に並べ!」佐藤先生の怒りは収まらなかった。我々を教室の端に横一列に並べると、順にビンタをし始めた。
パチン、パチンと勢いよく音が鳴る。私も覚悟を決め潔く引っ叩かれた。痛い。
ただ梨木だけ一人これを良しとせず、両手で両頬をガードしビンタから逃れようとした。
佐藤先生はその男らしくなさが頭にきたのか梨木の両手を無理やり下ろし、右頰と左頬の両方を引っ叩いた。我々の他のメンバーは片方だけだったのに。

この事は梨木が悪いと小3ながら感じた。
カンカンに怒ってる大人から卑怯にも逃げようとしたのだ。いくら痛いのが嫌だといっても逃げられる訳ないじゃないか。
潔く生きることが大事だという事をひどく痛感した事件であった。