9、やがて哀しきテキストサイト

私が20代の頃、ネットにはテキストサイトなるものが全盛を誇っていた。
あのブームはなんだったのだろうと今にしては思うが、当時は己の文章力、ライティングスキルの発揮場所と言ったら自らが運営するホームページ上での日記というステージがメインであった。

そこではいかにして文章で人を笑かすか、に主眼が置かれみな躍起になって日々感じたこと、起きたことなどを面白おかしく加工して日記上にまろび出していた。
私はそのような風潮に警鐘を発し自らの陰茎などをノーテキストで公開していた。
むろんそのようなことをしていれば今ではとんでもない性の悦びおじさんになってるところだが、訂正しよう、私はそういったブームには乗っかることなくただ単なる傍観者であった。

しかし私は文章で人を楽しませるという行為にすっかり魅了され、必死にそういったテキストサイトを巡回していた。
この人はどういった日本語で人を笑かすのだろう、どういった語彙で戦っていくのであろうか、そのようなことを目から吸収し自らが運営する小汚いホームページの日記に落とし込んでいった。

テキストサイトのライター達は神の領域で、私などはそこよりも数十段下ったところから見物していた。
いまにして思えば興味があるなら参戦すべきだったのかもしれないが、彼らのテキストは私の記事に比べればまさに職人の逸品であった。私なぞは芋であった。タッキー&翼で言う所の翼のうんこの中のトウモロコシの粒程度のものであった。

じゃあ今はどうなの?と問われればまだ自信がない。
書いても書いてもゲラゲラ笑うものなど誕生する気配すらない。
美輪明宏なら私の文章に小便をかけるであろう。高笑いしながら小便をかけるに違いない。
それはそうと「アナスタシア」かなりギリギリのタイトルだよな。