7、転校生への洗礼

私は小学1年の時に佐倉から安食へと引越した。
佐倉での学童時代は1学期しかなく殆ど覚えていないのだが、引越し先での小学校での出来事は鮮明に覚えている。

まずびっくりしたのは新しい学友達の手の挙げ方である。
教師が問題を出して、答えられる人を指す前に、分かった児童達は皆一斉に手を挙げるのだがこの姿に仰天したのだ。
前の学校では手は床に垂直つまり真上に挙げていたのだが、新しい学校では手は床に170度つまり真ん前目がけて教師に突き出す形で挙げていたのである。
「はいっ!はいっ!はいっ!」と先生わたしを指名してとものすごい剣幕で名乗りを挙げ、私はなんだかとんでもない所に来てしまったなぁと途方に暮れた。

これに慣れるのは時間がいった。
ある日いつもと同じように担任の先生が問題を出し皆一斉に手を前に突き出した。はいっ!はいっ!はいっ!とまるで盛りのきた猿のようである。
私も答えが分かったので、はい、と皆とは対照的に真上に手を挙げた。これがまずかった。一風変わった手の挙げ方だったので注目を浴びたのだ。
みんな「この転校生、変なんです!」と視線が私と先生の間を行ったり来たり。先生が「なんだね、君は」と私を見てきたので私は「そうです私が変な転校生です」と言いたいのをグッとこらえざるを得なかった。ただモジモジしただけだった。

そんなモジモジ君には当てられず代わりに安永君が指名され答えた。
変な転校生扱いには1年生の私に酷で、やむやむ皆と同じく手を床に170度挙げる羽目になったのだが、おっ立てバナナだなぁと思い嫌な思いで一杯だった。

日本のしかも学校では異端は排除される。
私はあらゆることで異端だったので、あらゆる点で奇異の目で見られた。
まだMっ気が育ってなかったので学校は私にとって苦痛な場所でしかなかった
いや、もしかしたらMの気質はそんな環境だったから芽生えたのかもしれない。
そういうことにしておこう。